プロセス1:
まず、監査人は監査役等と「監査上の主要な検討事項」についてコミュニケーションを行う。その際、当期の監査における重要な項目として「エネルギー事業部門の固定資産の減損」を挙げ、あわせて経営者が採用したシナリオが会計上の見積りに係る重要な仮定となること、複数のシナリオが存在すること、および経経営者によるシナリオA採用の場合における妥当性等を討議した。
プロセス2:
次に、監査人は監査役等と協議した事項の中から、監査上特に注意を払った事項を絞り込む。その中で、当該減損に係る項目は、複数のシナリオが存在しており、その選択は会計上の見積りに係る経営者の重要な判断であること、また見積りの不確実性が高く、監査判断に与える影響が大きいことから、これを監査上特に注注意を払った事項と評価した。
プロセス3:
最後に、監査人は、上記で決定した事項の中から職業的専門家として特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項として決定する。この過程で、監査人は、当該減損に係る項目が、見積りの不確実性が高く、またシナリオBを採用した場合は減損損失の認識が必要となることから、財務諸表利用者にとって重要な情報であり、監査上の主要な検討事項であると判断した。
監査上の主要な検討事項は、財務諸表利用者への監査に係る情報提供を主眼としており、監査報告書の情報価値を高めることを目的としている。そのため提供する情報は、項目、選定理由、および監査手続の簡潔な説明であり、企業の秘密を含む未公表情報の提供を意図したものではない。このため、監査上の主要な検討事項に記載される情報は通常、未公表情報を含まない。
監査人は当該判断のもとにおいて、シナリオBは未公表情報であることから、これを不適切に公開してはならない。当該事項を決定する前段階において、シナリオBを会計上の見積りに係る重要な前提条件として、シナリオAと合わせて財務諸表に 注記するよう経営者に促すとともに、必要に応じて監査役等と協議を行い、経営者に開示を促すよう求める。
「監査上の主要な検討事項」の記載は、財務諸表利用者に対し、監査人が実施した監査の内容に関する情報を提供するものであり、監査報告書における監査意見の位置付けを変更するものではない。このため、監査人による「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査意見とは明確に区別しなければならない。
「監査意見」は監査人による監査の結果としての財務諸表の信頼性に係る意見表明である。一方「監査上の主要な検討事項」は、その記載の充実により、監査の品質評価の新たな検討材料を提供すること、財務諸表利用者の監査や財務諸表に対する理解が深まり経営者との対話が促進されること、監査人と監査役等とのコミュニケーションが促進され効率的な監査の実施につながること等を実現し、結果として監査プロセスの透明性を向上させることを主な目的としている。
つまり、両者は、「監査上の主要な検討事項」の記載 が充実するほど、監査プロセスが透明化され、「監査意見」、ひいては財務諸表監査制度の信頼性も向上する、という関係にある。
「監査意見の根拠」区分の記載事項:
限定付適正意見の理由として、除外した当該減損に係る不適切な事項、財務諸表に与えている影響、及びその影響が重要ではあるが広範ではない旨
「監査上の主要な検討事項」区分の記載事項:
除外事項に係る項目以外に、監査上の主要な検討事項は存在しないと判断した旨
A社およびB社のみを重要な構成単位と識別した理由は以下のとおりである。
甲社グループ監査における財務的重要性の判断根拠として採用している「税引前利益の15%超」に該当する構成単位が、A社及びB社のみであること。
他の構成単位C、D、E社において、グループ財務諸表の観点から、特別な検討を要するリスクが存在しないと評価していること。
監査人Xは、構成単位の重要性の決定に際し、まずグループ財務諸表の重要性の基準値を決定する。次に、当該重要性の基準値をベースとして、構成単位の財務的規模、質的重要性等を考慮し、グループ財務諸表における重要性の基準値よりも低い額を、構成単位の重要性の基準値として決定する。
その理由は、構成単位において発生するグループ財務諸表上の未修正の虚偽表示と未発見の虚偽表示の合計が、グループ財務諸表全体としての重要性の基準値を上回る可能性を、許容可能な低い水準に抑えるためである。
C社において存在するリスクの程度
監査人Yに対し、C社監査計画の共有を依頼し、C社の監査手続について、グループ監査人の観点から、グループ財務諸表に影響を与える事項を中心に討議を行う。さらに過年度に発生した誤謬の修正状況及び関連する内部統制の改善状況、監査人Yの品質管理に係る体制等について、同様の観点から討議を行う。
アサーション:実在性
監査手続:貸付先に確認状を送付し、実在性を確かめる。
アサーション:評価
監査手続:貸付金の回収可能性に基づき、適切な貸倒引当金が計上されているか検討する。
アサーション:分類の妥当性
監査手続:回収リスクに応じ、破産更生債権等の適切な勘定科目に分類されているか検討する。
アサーション:表示及び注記
監査手続:連結財務諸表に当該債権に係る状況が適切に注記されているかどうか検討する。
※上記解答はクレアール会計士講座が独自に作成したものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。