平成19年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

平成19年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

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民 法

第5問

問1
1 設問(ア)について
甲・乙不動産に対する共同抵当の同時配当がなされているから、甲・乙の価額に応じてその債権の負担を按分する(392条1項)のが原則である。しかし、乙は物上保証人Cの所有である。このように、債務者が所有する不動産と物上保証人が所有する不動産の共同抵当の場合でも、392条1項を適用すべきか。
同1項は適用せず、債務者が所有する不動産から配当すべきである。なぜなら、物上保証人の法定代位(500条)に対する期待を保護すべきだからである。
よって、本問では、まず甲が配当にあてられるから、Aは、甲の売却代金から6,000万円の配当を受け、後順位抵当権者Dは、乙への代位ができない以上、甲・乙いずれからも配当を受けられない。
2 設問(イ)について
乙に対する異時配当がなされているから、Aは、乙の代価から、債権全額である6,000万円の配当を受ける(392条2項前段)。そして、物上保証人Cは、Bに対する求償権(372条、351条)を確保するため、Aに代位して、甲に対する抵当権を行使できる(500条、501条)。しかし、甲には後順位抵当権者Dがいる。そこで、CとDの優劣が問題となる。
Cが優先すると考える。なぜなら、先順位抵当権者Cの法定代位に対する期待を奪うべきではないからである。
よって、Cは、Aに代位して、甲への抵当権を実行し、6,000万円の配当を受けることができる。
以上

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問2
C名義で登記されている乙不動産の所有者はEだから、Cは乙に抵当権を設定する権限はないし、登記に公信力はない。したがって、Aは、抵当権を取得できないのが原則である。しかし、それでは不動産取引の安全を害する。そこで、Aを保護できないか。94条2項の類推適用が問題となる。
そもそも、94条2項は、虚偽外観を作出した原権利者の犠牲により、虚偽外観を信頼して取引をした第三者を保護する趣旨である。とするならば、通謀の有無は重要ではなく、(1)虚偽外観、(2)(1)に対する原権利者の帰責性、(3)(1)に対する第三者の正当な信頼という要件をみたせば、94条2項を類推適用すべきである。そして、(3)については、一般的に帰責性の強い原権利者の保護を重視する必要はないから、原則として、第三者は善意で足りるが、原権利者の帰責性が弱い場合は、無過失であることも必要と考える。
本問では、(1)所有者はEだからC名義での登記は虚偽だし、(2)自ら虚偽の登記をしたEには強い帰責性が認められるから、(3)Aが善意であれば、94条2項を類推適用できる。よって、Aは、善意であれば、甲・乙の共同抵当権を取得するが、悪意の場合は、甲の抵当権のみを取得する。
以上

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第6問

問1
Bは無権利者だから、Cは、自動車の所有権を承継取得できず、したがって、Dも所有権を承継取得できない。そして、この自動車は登録自動車だから、C・Dは即時取得(192条)もできない。なぜなら、登録という明確な公示手段が採用されている登録自動車の取引には、不明確な公示手段である占有を補完するという192条の趣旨が妥当しないからである。このように、C・Dが所有権を取得できないとすると、C・D間の売買は他人物売買(560条)ということになる。
そこで、Dが売買契約を解除(561条)した場合、C・D間の法律関係はどうなるか。解除に伴いC・Dは相互に原状回復義務(545条1項)を負う。よって、CはDに代金60万円と利息の返還義務(545条2項)を負う。
では、Dはどうか。Dは、Aに原物の返還義務を負うのが原則であるが、すでに自動車はAに返還しているので、Cに対する原物の返還は不能である。また、Dには自動車の返還に代わる価額の返還義務も負わせるべきではない。なぜなら、自動車をCに返還できなくなったことにつき、Dには帰責性がないからである。
しかし、Dは、Cに使用利益を返還すべきである。なぜなら、解除によって売買契約が遡及的に無効となる結果、契約がなかったのと同一の財産状態を回復させるには、使用利益も返還させる必要があり、このことは、他人物売買の解除にも妥当するからである。
本問では、Cは、Dに代金60万円と利息の返還義務を負うのに対して、自動車は30万円に減価しているから、Dは、Cに使用利益30万円の返還義務を負う。

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問2
1設問前段(ア)について
Eの過失で自動車が盗難にあっており、自動車が債務者Cの責めに帰することができない事由によって「滅失」している。よって、CのDに対する所有権移転義務は消滅する。では、Dの代金債務はどうか。他人物売買における危険負担が問題となる。
特定物売買であれば債権者主義(534条1項)を適用すべきともいえる。しかし、公平の見地から、債権者主義は、買主が目的物の支配を取得したときから適用すべきである。もっとも、他人物売買では、売主が所有権を移転するまで、買主は目的物の支配を取得できないから、債務者主義(536条1項)を適用すべきである。
本問では、CがDに所有権を移転していないので、支配もDに移転していない。よって、536条1項により、Cが受領した代金は不当利得(703条)となる。しかし、Dは賃料を受領している可能性がある。よって、Dは、60万円から賃料分を控除した額を「損失」として、Cに返還請求できる。
2設問後段(イ)について
D・E間の賃貸借契約は、他人物賃貸借として有効である(560条)。しかし、Eの過失により、自動車の使用収益は不能となっている。したがって、Eは、債務不履行による損害賠償責任(415条)を負う。そして、D・E間の賃貸借契約は当然に終了すると考える。なぜなら、使用収益できないEに賃料支払義務を負わせるのは不合理だからである。
以上から、EはDに損害賠償義務を負い、DE間の賃貸借契約は終了する。
以上

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上記解答について

※上記解答は独自に作成されたものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

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