令和2年 公認会計士 試験 論文式試験解答

令和2年 公認会計士試験 論文式試験解答 監査論

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 なお、この解答はクレアール会計士講座が独自に作成したものになります。

監査論

第1問

問題1

下線部(A):
 常に公正不偏の態度を保持するとは、監査人が精神的独立性を保つことであり、職業的専門家としての判断を危うくする影響を受けることなく、結論を表明できる精神状態を保持し、誠実に行動し、公正性と職業的専門家としての懐疑心を堅持できることをいう。

下線部(B):
 独立の立場を損なう利害や独立の立場に疑いを招く外観を有してはならないとは監査人が外観的独立性を保つことであり、事情に精通し、合理的な判断を行うことができる第三者が、全ての具体的な事実と状況を勘案し、監査人の精神的独立性が堅持されていないと判断する状況にはないことをいう。

両者の関係:
 独立の立場を損なう利害や独立の立場に疑いを招く外観を有してはならないといった外観的独立性は、監査人が常に公正不偏の態度を保持するという精神的独立性を具体的に支えるものとして要請されている。すなわち、監査人の公正不偏性に影響を及ぼす要因や可能性を排除することにより、精神的独立性の基盤をより強固にするという関係にある。なお、監査人の独立性は、本質的には精神的独立性を保持することによって確保される。しかし、外観的独立性を損なう要因がある場合には、たとえ心の状態として公正不偏の精神的な態度を保持していたとしても、利害関係者に疑惑を抱かせる結果、財務諸表監査の価値が失われる。

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問題2

 職業的懐疑心は、誤謬又は不正による虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、監査証拠を鵜呑みにせず批判的に評価する姿勢をいい、監査人は、企業に対して独立性を保持することにより、他の者からの不当な影響を受けることなく監査意見を形成することができる。よって、監査人が独立性を保持することにより、職業的懐疑心を保持することができる関係にある。

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問題3

方策1:
 大会社等から、特定の非監査証明業務により継続的な報酬を受けている場合に、監査証明業務の同時提供が禁止された。これにより、監査証明業務の信頼性を確保し、自己監査及び監査人の経営判断への関与を排除するといった効果が期待された。

方策2:
 大会社等については、公認会計士又は監査法人の業務執行社員等を、一定期間で交替するローテーション制度が導入された。これにより、同一の監査人が大会社等に長期間関与することから生ずる当該監査人の外観的独立性に対する疑念を払拭し、監査の客観性を確保する効果が期待された。

方策3:
 監査証明業務を行った公認会計士等は、監査証明業務を行った当該財務書類に係る会計期間の翌会計期間の終了の日までの間は、被監査会社又はその連結会社等の役員等に就いてはならないといった就職制限を導入した。これにより、監査人が将来関与先に就職することを見込んで、監査証明が不当に歪められることを排除する効果が期待された。

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問題4

 当監査事務所に所属のIT専門職員は、監査契約の締結を予定している会社と昨年まで雇用関係にあり、雇用関係解消後2年間のインターバルをあけることを定めた監査事務所の定める独立性の保持のための方針に反するため、監査チームに編成することはできない。当該監査業務にはITに係る高度な知識が必須であるが、当監査事務所には、その他に適切な人材が存在しないことから、ITに係る外部の専門家を利用するかどうかを検討する。

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第2問

問題1
財務諸表全体レベル

1.
 業務全般にわたって創業者である社長の決裁を受ける必要があることから、経営者に権限が集中し、経営者による内部統制を無効化するリスクがある。

2.
 現状、経理部に所属する正社員は2名で、上場前からの担当者1名が退職予定、且つ後任も決まっていないことから、経理部門の人材が不足し、誤った会計処理が行われるリスクがある。

アサーション・レベル

1.
 リスクの内容:各店舗の売上データについて、本社の経理部で独自に修正を行うことができるため、売上高のカットオフエラーが生じるリスクがある。
 取引種類,勘定残高及び関連する注記事項:売上高

アサーション:期間配分の適切性
2.
 リスクの内容アルバイト店員の人件費が高騰していることから、利益操作を目的とした費用の過少計上や処理漏れなど、費用の計上が漏れるリスクがある。
 取引種類,勘定残高及び関連する注記事項:人件費

アサーション:網羅性
3.
 リスクの内容第8期の新規出店数が40店舗を計画し、有形固定資産の増加が想定されるため、資産の計上漏れ及び減価償却の計算を誤るリスクがある。
 取引種類,勘定残高及び関連する注記事項:有形固定資産・減価償却費

アサーション:網羅性・評価の妥当性

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問題2

 当初の計画よりも実績が悪化していることから、監査人は、関連するアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクの評価結果を当初計画時よりも高く変更した。その結果、監査人は監査リスクを許容可能な低い水準に抑えるために、発見リスクの水準を低く設定するように監査計画を修正して、より証明力が強く適合性の高い監査証拠を入手できる実証手続の実施、期末日又は期末日近くでの実証手続の実施、及びサンプル数の増加など、実施する監査手続の種類、時期及び範囲について監査計画を修正した。

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問題3

 会計上の見積りは、正確に測定することができないため金額を概算することであり、経営者の主観的判断に基づくものである。主観的判断には、恣意性が介入される可能性があり、固有リスクが高く、見積りの適正性を担保する有効な内部統制の構築が困難で、統制リスクも高いことから、重要な虚偽表示リスクは高くなり、監査上特段の検討が必要となる。

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問題4

 会計処理:当初予測していないかった営業赤字店舗の発生といった、経営環境の著しい悪化により、減損の兆候があるため、減損損失の認識・測定の会計処理を検討する。
 アサーション:評価の妥当性

実証手続の具体的な内容
1.
 資産のグルーピングの適切性を検討するため、グルーピングの単位を決定した基礎となる会社資料の閲覧を実施する。

2.
 将来キャッシュ・フローの見積りの合理性を検討するため、予算や将来の中長期事業計画を入手し、経営者等に質問を実施する。

3.
 翌期以降に新規に出店、又は退店する予定の店舗の有無を確かめるため、取締役会議事録の閲覧を実施する。

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上記解答について

※上記解答はクレアール会計士講座が独自に作成したものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

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