平成29年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

平成29年 公認会計士試験 論文式試験解答 民法

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 なお、この解答はクレアール会計士講座が独自に作成したものになります。

民 法

第5問

問1
 代理行為の瑕疵の有無は、代理人について判断する(101条1項)。そして、代理人Bは、250万円の価値のある甲動産の価値を100万円と見誤って本件売買契約を締結しているから、効果意思の形成過程である動機に錯誤がある。そこで、Bは、錯誤に基づいてその代理行為の無効(95条)を主張することが考えられる。動機の錯誤も95条本文の「錯誤」といえるか。
 原則として、動機の錯誤は95条本文の「錯誤」には該当しないと解する。錯誤とは効果意思と表示の不一致であるが、動機は意思表示に含まれないため、動機の錯誤は効果意思と表示に不一致はないからである。しかし、動機が明示的又は黙示的に表示された場合は「錯誤」に該当すると解する。表示された動機は意思表示の要素となるし、表示によって表意者の保護と取引の安全の調和を図ることができるからである。また、「要素」の錯誤とは、錯誤がなければ表意者のみならず一般人も意思表示をしなかったといえる程の意思表示の重要部分の錯誤と解する。
 本問では、Bが動機を表示している場合は、「錯誤」に該当する。また、甲動産の価値を100万円と見誤る錯誤がなければBのみならず一般人も250万円で売却するという意思表示をしなかったといえるため、「要素」に錯誤があるといえる。
 しかし、Bは画廊を営む絵画の専門家であるにもかかわらず、250万円の価値のある絵画をその半値以下の100万円と見誤っていることに、重過失(95条ただし書)が認められる。
 よって、AのCに対する甲動産の引渡請求は認められない。
 Bは、代理人として、Aから、甲動産を200万円以上で売却する代理権を与えられていたのであるから、100万円で売却する代理権は有していない。よって、Bが甲動産を100万円で売却したことは無権代理行為であり、その売却の効果はAに帰属しないのが原則である(113条1項)。では、表見代理は成立しないか。Bには甲動産を200万円以上で売却する代理権が与えられているから、これを基本代理権として200万円未満である100万円での売却について110条が適用できないか。
 110条によれば、代理人が基本代理権を超える行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があることが必要である。そして、「正当な理由」とは、第三者が代人に代理権があると信じ、そのように信じたたことにつき過失がないことをいうと解する。
 本問では、Cが、Aに100万円で売却する代理権があることを疑ったという事実はないので代理権があると信じており、専門家であるBから購入しているからそう信じたことに過失はない。
 よって、AのCに対する甲動産の引渡請求は認められない。

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問2
 Bは甲動産を預かっているにすぎず処分権限はないため、Bによる甲動産の売却は他人物売買であり、Dは、甲動産の所有権を取得することができないのが原則である。しかし、Dは、Bが甲動産の所有者ではなかったことにつき善意であるから、無過失でもあれば、甲動産を即時取得(192条)する可能性がある。もっとも、売買契約を締結した時点では甲動産をBが預かることとしており、Dは占有改定による引渡し(183条)を受けているにすぎない。そこで、占有改定も192条にいう「占有を始めた」に該当するかが問題となる。
 たしかに、192条は占有を信頼した者を保護して取引の安全を図る規定であるから、占有の態様がどうであれ、適用されるべきともいえる。しかし、帰責性なくして権利を失う原権利者の静的安全にも配慮すべきである。そこで、第三者が即時取得するには原権利者の動産に対する支配から動産を離脱させて自己の支配下に置くことが必要と考えるべきである。もっとも、占有改定では占有状態に何らの変化もないので動産に対する支配が第三者に移ったとはいえない。よって、占有改定は「占有を始めた」には該当しないと解する。
 以上から、売買契約を締結した時点では、占有改定を受けたDは甲動産を即時取得できない。
 そうすると、その時点での甲動産の所有権はAに帰属しているから、Aから譲渡担保権の設定を受けたEは譲渡担保権を有効に取得する。ところが、売買契約の締結後にDは甲動産の現実の引渡しを受けている。よって、その時点で善意かつ無過失であれば、Dは、譲渡担保権の負担のない甲動産の所有権を即時取得し、Eは譲渡担保権を失う。
 以上から、Dは、甲動産の現実の引渡しを受けた時点で善意かつ無過失であるときは、自己が甲動産の所有権者であってEには占有権原がないことを理由に、Eからの引渡請求を拒むことができる。
 Dは、Bが甲動産の所有者でなかったことにつき悪意であるから、甲動産を即時取得できず、Eは譲渡担保権を取得する。よって、Dは、所有権に基づいては甲動産の返還を請求できない。
 では、占有回収の訴え(200条1項)ではどうか。Eは譲渡担保権を取得しているがDには占有権原がないとしても、占有権は物に対する事実上の支配が保護される権利だから、無断で甲動産を持ち去られたことでEは「占有を奪われ」ている。しかし、占有回収の訴えは善意の特定承継人には提起できない(200条2項ただし書)。よって、Dは、Eの特定承継人Fが悪意の場合にかぎり、占有回収の訴えを提起して甲動産の返還を請求できる。

第6問

問1
 Aは、Bが所有する甲土地につき、建物所有を目的とする賃貸借契約を締結しているから、甲土土地の賃借権を取得している。そして、Aは、甲土地に建築した乙建物をCに売却したことに伴い甲土地の賃借権もCに譲渡されるが、これにつきBの承諾(612条1項)を得ているので、Cは、乙の所有権とともに甲土地の賃借権をも有効に取得している。そこで、Cは、この甲土地の賃借権に基づく妨害排除請求権により、Dに対して、丙車両の撤去を請求することが考えられる。賃借権は債権にすぎず、物権のような排他性を有しないことから、不動産賃借権に基づく妨害排除請求権が認められるかが問題となる。
 不動産賃借権は賃借人の生活の基盤であり、その利用が妨げられた場合にこれを排除する必要性が高い。また、物権に基づく妨害排除請求権は物権の排他性を根拠とするが、賃借権であっても不動産賃借権の機能は同じく不動産利用権である地上権の機能に類似しているため、地上権に準じてその権利を強化すべきである。
 そこで、不動産賃借権も対抗要件(605条、借地借家法10条1項、31条1項)を備える場合には、物権に類似する排他性を備えることから、その場合には不動産賃借権にも妨害排除請求権を認めるべきと考える。
 本問では、Cは、甲土地の賃借権につき登記をしておらず、また、乙建物の所有権移転登記も経経していないから、対抗要件を備えていない。
 よって、Cは、甲土地の賃借権に基づいて妨害排除請求権を行使して、丙車両の撤去を請求することはできない。
 では、Cは、甲土地の賃借権という特定債権を被保全債権として、甲土地の所有者であるBの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使(423条)することができないか。
 423条の趣旨は債務者の責任財産の保全にあるから、被保全債権は金銭債権でなければならないのが原則である。しかし、賃貸人が自ら妨害排除しない限り賃借人の救済として他に有効な手段がない場合には代位を認める必要性がある。また、賃貸人には使用収益させる債務があるから、代位を認めても債務者の権利行使に対する不当な干渉にはならない。よって、債権者代位権の転用として、特定債権を被保全債権とする債権者代位権の行使を認めるべきである。そして、債権者代位権を転用する場合は債務者の資力と無関係であるから、債務者の無資力要件は不要と考える。
 よって、Cは、Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して、Dに対し、丙車両の撤去を請求できる。
 なお、Cは、甲土地を占有していないから、占有保持の訴え(198条)は提起できない。

問2
Bに対する請求
 Aは、乙建物のCへの売却に伴ってその敷地である甲土地の賃借権の譲渡について、Bの承諾(612条1項)を得ている。よって、Cは、乙建物の所有権とともに甲土地の賃借権も有効に取得して、賃借人となっている。
 そこで、第1に、賃借人Cは、賃貸人Bに対して、「甲土地の使用及び収益に必要な修繕」として、有害物質の除去を請求することができる(606条1項)。また、Cは、甲土地の有害物質を除去するための費用を支出したときは、Bに対して、直ちに「賃借物について賃貸人の負担に属する必要費」の償還を請求することができる(608条1項)。
 第2に、Cは、Bに対して、甲土地の賃借権について瑕疵担保責任を追及することが考えられる(559条、570条)。まず、「瑕疵」とは、当該契約において予定されていた性質を欠いていることをいうと解する。本問では、甲土地は猛毒の有害物質によって汚染されていて、居住を続けると健康被害を受ける可能性が高いというのであるから、乙建物の売買契約において、AとCが予定していた性質を欠いており、「瑕疵」が認められる。また、「隠れた」瑕疵とは、目的物に瑕疵のあることを知らず、かつ、知らないことにつき過失がない場合をいう。本問の瑕疵は、本件売買契約に先だって行われた調査の際には検知されなかったのであるから、Cは甲土地の賃借権に瑕疵のあることを知らず、かつ、知らないことにつき過失がないから、「隠れた瑕疵」が認められる。そして、そのために居住を続けると健康被害を受ける可能性が高いというのであるから、「契約をした目的を達することができない」といえる。
 以上より、Cは、Bに対して、瑕疵担保責任の追及として、甲土地の賃貸借契約を解除するとともに、損害賠償を請求することができる。
Aに対する請求
 Cは、Aに対して、甲土地の賃借権付きの乙建物の売買における賃借権に「瑕疵」があるとして瑕疵担保責任(570条、566条)を追及できるか。敷地の物理的欠陥が賃借権の「瑕疵」といえるかが問題となる。
 敷地の物理的欠陥は、賃借権の「瑕疵」とはいえないと解する。売買の目的物とされたのは建物とその敷地の賃借権であり、賃貸人の修繕義務の履行によって補完されるべき敷地の欠陥については賃貸人に修繕を請求すべきだからである。
 以上より、Cは、Aに対して、瑕疵担保責任の追及により、乙建物の売買契約を解除することはできないし、損害賠償を請求することもできない。

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上記解答について

※上記解答はクレアール会計士講座が独自に作成したものであり、「公認会計士・監査審査会」が公式に発表したものではございません。ご理解のうえ、ご利用下さい。

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